地方の企業は、パッケージを「デザイン」してはいけない。

抜け殻でたいへん申し訳ないですが、
この写真は、我が家でいまブームの
「タカキベーカリー」のパッケージです。

我が家は週末の朝だけパン食。
だから買い物でのパン選びは
楽しみの一つ。

そんなある日、
このパッケージに出会い、

「お、な、なにかなこれは・・・?」

ということで購入してみたところ、
目下、大ハマリ中なのであります。

味はもちろんなのだけど、
私がハマっている理由は、
この外見。

だって、すごいデザインだもの。

何がすごいって、
「これはないだろうよ」
と思うんです。
ぱっと見・・・ウーン、というか。

私らデザイナーからすると、
「なんでこの文字組?」
「ワ、ワードでやっちゃったの?」
「予算なかったのかな?」
って失礼ながら思います。

一見、ね。

売り場で他のパンと比較すると、
どう見ても地味。
もうちょっと何とか・・・って、
まんまと油断させられるんですよ。

でも。

このデザインには、
なにか隠れた秘密がある。
なぜか惹かれる魅力がある。

ということで、
血が騒ぎ出しまして。

 

タカキベーカリーのパッケージデザインがあなどれない理由

 

1. デザインが地味なのは、パンそのものを見せたいから。

だと思うんですね。
商品名からして、プロダクトに
こだわりがないわけがない。
イーストフード不使用、
安定剤、乳化剤不使用など、
添加物にも気を遣っています。
品質に自信があるんです。
だから、パンの姿を堂々と見せたい。

街の手作りパン屋さんは
パンが裸で並んでいます。
袋に入っていても、基本無地透明。
地味にすればするほど、
実は高級感が出せるのがパンですね。
しかも、おいしそう。

2. 一見、手を抜いてそうに見えるが、実はかなり考えてある?

地方のメーカーさんが、
独自商品を作る場合のパッケージは、
大量につくることができません。

誰もが知っている、
どこでも手に入る、
大手のメーカーとはちがいます。

だから、袋や箱は、
たいてい無地の既製品を使います。
で、実際のデザインは、
ラベルシールを貼ることで
個性を出します。

でも、そういうものとはまたちがいます。
一つ一つ袋に印刷してある。
ということは、けっこうな規模で
生産されているということ。

補足;
ラベルだからと揶揄しているのではありません。
実際、酒類はラベルが多いです。
高級品は実はラベルのことが多いので、
意図を持ってラベルにすることもあります。

袋も、商品によって、
すりガラス風のマット(つや消し)
なものだったり、
ほのかに乳白色だったりします。

もちろん、そんなことは
わざわざ論ずるまでもなく
基本的なことなんですが、
そこを使い分けているところに
このデザインに意図を感じるんです。

パンの色が濃いものは、
商品名が白い文字に
なっていてちゃんとわかるの〜。

全部同じではなくて、
各商品がドレスアップされる、
最低限で最適な方法をとっている?
とっているの? ひょっとして?

しっかり考えてあるのです。
そしてそれは、おそらく、
パンそのものが、その姿のまま、
いちばん上質に見える工夫がしてある、
ということです。

3. 一見ワードで書いた?ような商品名にも自信の表れが。

デザインをどうのこうのと言っても、
商品名と、その補足説明しか
書いていないので、
書体を何にするかで、
雰囲気が決まってしまう、
実は、レベルの高いむずかしいデザイン。

一般的には、
見出しやタイトル、
商品名にするのに、
向いている書体というものがあります。

文字のデザインは、
そのデザインによって、
言葉を「修飾」する働きがあります。

「ありがとう」を、
より気持ちが込もっているように、
「楽しい」を、
よりはずむ気持ちにさせるような
文字のデザインがあります。

タカキベーカリーさんの
商品名に使われる書体は、
ゴシックMBと言われる書体で、
ベーシックですが、
インパクトを与えながら、
フォーマル感も出せて、
引き締め感があります。

だから、シンプルな短い言葉を、
意味を強めて、言い切りたい時に、
その手助けをしてくれる書体です。

でも、使い方がちょっと変なのです。

あまりこういう使い方はしないんです。
わざわざ力を弱めるような、
文字配置になっている。

縦長に「なってしまっている」感があるし、
その割には文字の間隔が広い。
文字を置く場所に制限があるために
縦長になっているなら、
文字間を狭くすれば解決するわけで、
やはり「なってしまった」感があるんですね。
要するに、素人さんがやってしまいがちな
処理がとってあるところです。

これが、意図的なら
すんごく考えてあるぞ、と。
それとも、社内でまかなってる?

でも、実際の商品を見ると、
パンの上に文字がしっかり乗って、
広がりすぎずにいる。
パンの邪魔をしていない・・・。

この、絶妙に物足りない主張が、
地方感、高級感、手作り感にもつながる。

ちなみに、小さく書かれた補足説明文は、
デザイン業界では人気の書体です。
使うだけでスタイリッシュになります。

これ以上は書くときりがないので
やめておきますが、
実際のデザインの現場では、
それほどこだわりは
ないのかもしれませんし、
社内でまかなっているだけかもしれない。

しかし、これがほとんどの商品に
ちゃんと踏襲されているから、
統一感が出ちゃってる。
そう思えるデザインです。

これを見て思ったのは、
枝葉末節のデザイン論ではなく、
作り手のいちばんの強みが、
どれだけブレなく、にごりがなく、
相手の目に飛び込んでくるか、です。

そういう意味で、
地方の企業が見せがちな、
ナショナルブランドを追うような、
精彩でキレイなデザインは、
せっかくの強みを消し去ってしまう、
と感じるのです。

もちろん流通環境もある。
あるんですが。

あれよこれとよ、
主張がやかましい売り場において、
あえて、デザインしない。
無印な潔さと強さが、
武器になるともあるのですよね。

ただ「なっちゃった」感は
意図を持たないとね。

タカキベーカリーさんのホームページ

まあ、これを見れば、こだわりは一目瞭然なんですけどね。

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